シベリアでの12年間を終えたあと、私はトルコのイスタンブールにやって来ました。
最初は、ここにそんなに長く滞在することになるとは思ってもいませんでした。
けれど気づけば、同じように12年という月日が流れていました。
この街に足を踏み入れた瞬間、まるで全身が五感で包まれるような感覚を覚えました。
市場のにぎわい、モスクから聞こえる祈りの声、路地を通ると漂ってくるスパイスやパンの香り…
どこを歩いても、色と音と匂いがあふれていて、街そのものが生きているようでした。
特に印象的だったのは、ボスポラス海峡の夕暮れ。
水面に映るオレンジ色の光、行き交う船のざわめき、遠くに響くコーランの詠唱…。
日常の景色の中に、非日常がふわっと混ざる瞬間が何度もありました。
イスタンブールでは、街のにぎやかさや人々のエネルギーに触れるだけで、新しい刺激を受け、心が軽くなるのを感じました。
ここでの毎日は、五感をフルに使って「生きていること」を実感させてくれる時間でした。